遺言書を作成するメリット・デメリットと注意点
終活をしている、遺産相続について適切な処理をしておきたい、などの理由で「遺言書」を作成しておこうと思っている方も多いのではないでしょうか?
遺言書を作成しておくメリットとデメリットについてお伝えした上で、遺言書作成の際の注意点をお伝えします。
遺言書って何でしょうか
まず、遺言書とはどのようなものなのでしょうか。
イメージだけなら、家族への思いや自分の財産について誰に譲る…などの事を書いてる書面で、死んだら弁護士が読み上げる…というものではないでしょうか。
定義をするならば遺言書とは「遺言を書面にしたもの」を言います。
そして遺言とは、民法に規定がされている、自分の財産等に関する最後の意思表示をしたものです。
法律の規定では例外的に書面になっていなくても遺言の効果が認めれるものもあるのですが、現実に用いられる遺言は書面を作成して有効になるものがほとんどなので、基本的には遺言は書面になっていると考えましょう。
相続人となる家族などに感謝の言葉を遺言書の中で述べたりすることはできますが、あまり一般的ではなく、財産処分に関するもの以外については遺書などの手紙やエンディングノートといわれるものでされるのが一般的です。
2.遺言書を作成しておくことのメリット
では遺言書を作成しておくことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
2-1.相続争いが起きにくい
遺言をせずに相続が開始すると、法律の規定にのっとった相続が開始されます。
この場合、調整の規定はありますが、同居している相続人・後を継ぐ相続人・あまり交流の無い相続人、すべて一律の相続分が適用されます。
その人たちが、相続分に基づいて協議をして遺産分割をするため、不公平感が生じたり、場合によっては相続人相互間で裁判に発展して家族の絆が壊れてしまう、という事にもなりかねません。
遺言書を作成して遺言を遺しておくと、遺留分という規定に基づく一定の制限はありますが、相続に関する指定をできます。
つまり、相続人としては被相続人の死後に協議をする必要などがなくなるため、スムーズに遺産相続ができるようになり、争いの芽を摘むことができるようになります。
2-2. 相続人以外の人にも財産を残してあげることができる
遺言を残さないで相続が開始すると、法定相続人という基本的には親族関係にある人に対してのみ財産が承継されることになります。
しかし、遺言書では相続人以外の方にも死後に財産を譲り渡すことが可能です。
生前お世話になった、長男のお嫁さんや、お手伝いさんなどに財産を譲り渡すような事も可能ですし、孫に財産を遺言で譲り渡すことで相続税対策をすることができるなどのメリットがあります。
3.遺言書作成にもデメリットはある?
そんな遺言書作成ですが、デメリットもあります。
3-1.手続きの負担
まず、遺言書を作成する手続きにはそれなりの負担が伴います。
遺言書は民法の規定に従った厳格なものでなければなりません。
一番よく利用される公正証書遺言では、公証人・交渉役場とのやり取りをして費用をかけて行います(通常は弁護士などの専門家を利用しながら作成しますので、専門家への報酬もかかります)。
また次に利用される、自筆証書遺言で遺言書を作成する場合には、現状全文を手書きで書く必要があり、間違った場合には◯字削除・◯字加入など、厳格な修正方法があり、間違うと遺言書がまるごと無効になるというリスクを背負います。
これらの遺言書を一度作成すると、訂正するためには訂正のための遺言書を作成する必要があります。
これらの正確な手続きを踏む負担があります。
3-2.遺言をしたという事実が外に出るのは場合によってはデメリット
遺言書の作成については、たとえば公正証書遺言や秘密証書遺言というものを利用した場合には、証人という人を用意しなければなりません。
そのため家族に内緒で作成したとして、遺言書を作成した事実を知られてしまうと、どのような遺言をしたのか?ということが争いの火種になるようなこともあります。
これに関しては、家族で話し合った上で遺言をしたり、話し合うのが難しい状況である場合には弁護士や行政書士など、法律上秘密を守る義務(守秘義務)を負っている人たちに依頼をすると、証人となった内容も秘密にしてくれます。
4.遺言書を作るときの注意点
遺言書を作るときにはどのような注意点があるのでしょうか。
遺言書をつくる際には、できる限り法律の専門家に依頼するべきといえます。
これは、上述したとおり遺言に関しては民法が厳格に規定しており、違反すると遺言書が無効になってしまうことがあります。
遺言書自体が無効になるケースとしては自筆証書遺言をする場合ですが、公正証書遺言をする場合でも遺留分の規定に反してしまうなどの恐れがあったり、手続きをするにあたって公証人という元裁判官とやりとりをしなければならないのは負担です。
確かに費用はかかるものですが、手続きを確実かつスムーズにすすめるためには、弁護士・税理士・司法書士・行政書士などの法律専門家に相談しながらすすめましょう。
遺言書の種類
遺言書には、3つの種類があり、それぞれ決められた様式があります。
遺言書は様式の条件を満たしていることが、まず重要になります。
遺言書関連情報
自筆証書遺言の方式緩和(平成31年1月13日施行)と保管制度の創設(令和2年7月10日施行)
風俗営業者の相続承認方法(60日以内)。遺言書での営業継続否認
ペットのための遺言書と信託契約
散骨と遺言
遺言代用信託
公正証書遺言の証人2名
公正証書遺言を作成する場合、証人2名が必要ですが、当事務所では、2名の証人の引き受けも行っております。
遺言に係るよくある質問
付言事項とは、法的な効力はありませんが、遺言書の最後に書き加えることができる文章です。
法定相続分と異なる遺言を残すときは
法定相続分と異なる遺言を残すときは、その遺言書に従って、手続きをしてもらう「遺言執行者」を 決めて、遺言書に残した方が良いでしょう。
遺言執行者とは
遺言者は、自分が死亡したあとに遺言が正しく実行されるのを見届けることができません。
遺言者は、責任をもって遺言を実行する人「遺言執行者」を遺言書の中で指定することができます。
遺言執行者は、遺言を執行するために必要なことができ、相続人は遺言の執行を妨げることができないよう民法に定められています。
遺言執行者が指定されていなかった場合は、家庭裁判所に、相続人と利害関係のない遺言執行者を選任をしてもらうことはできます。
ただ、遺言執行者は、必ず選任しなければならないものではありません。
行政書士は、遺言執行者にもなれます。