会社設立のメリット
対外的信用力の増大
会社は、一般的に個人事業主よりも信用を得られます。 業種によっては、大手企業などは、実績があっても個人事業主へ仕事を発注しない会社もあります。
金融機関からの借入れ
金融機関からの借入れを予定している場合には、信用力のある法人の方が有利です。金融機関からの融資交渉では、個人事業主は融資条件が会社組織よりもかなり厳しくなります。
事業拡大の限定責任
個人事業主の場合、借入金、仕入れ先への未払いなど、事業主が返済しなければなりません。 これに対して、法人の場合は出資の範囲内での責任にとどまりますので、会社が破産した場等でも形式的は個人に返済義務がありません。 ただし、中小企業の場合、金額の大きな仕入代金の決済や、金融機関の借入れについて、社長個人が連帯保証人になることを求められる場合がほとんどです。
会社設立のデメリット
会社設立の費用
会社を設立するには、定款の作成・登記申請など個人事業主に比べて費用がかかります。
株式会社を設立する場合には、最低でも約25万円程度の費用(定款認証費用約52,000円、定款認証印紙代40,000円と登録免許税150,000円。行政書士にご依頼の場合は、別途定款作成費用55,000円(ただし、当所の場合、定款認証印紙代40,000円がかかりません。))がかかります。
社会保険の加入義務
代表取締役一人の会社でも社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入が義務づけられます。社会保険の保険料は、国民健康保険と国民年金に加入する場合に比べて、本人負担分は減りますが、会社負担分がありますので、総額としては高額になります。ただし、厚生年金はもらえる年金の額が国民年金に比べて多くなります。従業員を雇用する場合には、社会保険料の会社負担分がかかります。
法人税申告、変更登記など事務負担の増加
税金の申告は、個人事業主の所得税より法人税の申告が複雑になります。税理士などの専門家に依頼する場合には、その費用がかかります。
社会保険や労働保険の手続きも経常的に発生します。
また、株主総会の開催、役員変更登記などの手続きも必要となり、個人事業主の場合に比べて事務負担が増加します。
個人資金と法人資金の分離
個人事業主の場合、事業により得たお金は自由に使うことができますが、法人化すれば会社の財産と個人の財産は明確に区分されるため、社長であっても、会社のお金を自分のために使うことはできません。
会社設立に必要な印鑑の準備
会社実印(代表者印)
代表者印とは、登記申請書に押印する代表取締役が登記所に届け出る印鑑になります。法務局に設立登記申請をする際には、代表者印(会社実印)が必要になります。
代表者印の大きさには登記上の制限があり、「1辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるもの」と定められています。
一般的には直径18mmの丸印が使用されます。
その他の印鑑:銀行印、ゴム印など
会社設立の定款作成
定款とは、会社の目的や組織、運営、構成員や株主の地位などを定めた会社の根本規則、またはその書面のことを指します。定款の作成は、設立する会社の最重要事項を定めることです。会社設立の手続き上、すべての会社に義務付けられていますので、定款の作成は必須事項になります。
会社の設立時には、会社設立の手続きを具体的に進める立場である発起人が定款を作成します。作成された定款は、発起人全員の署名または記名捺印がなされ、さらに公証人の認証を受けることが必要です。
定款の絶対的記載事項
定款の記載事項には「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類が存在し、必ず記載が必要な記載事項については、記載がないと定款自体が無効となってしまいます。
定款の絶対的記載事項は、以下の項目があります。
- 商号
- 目的
- 本店の所在地
- 会社の設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
会社設立の商号のルール
同一の所在場所における同一の商号の登記は禁止されています。
株式会社の場合は、「株式会社」という文字を商号中に使用しなければなりません。
「銀行」「消費生活協同組合」「信託会社」「保険会社」「証券会社」などの公益性の高い事業については、法令により、これらの事業を行うもの以外の使用は禁止されています。
使用可能な文字は、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字や「&」、「’」、「,」、「-」、「.」、「・」などの符号になります。
会社設立の目的(事業目的)のルール
会社は定款に定めた事業目的の範囲内で、権利能力が認められ、事業を営むことができます。事業目的は定款だけではなく、登記簿の記載事項にも含まれています。
定款の事業目的には、「明確性」「営利性」「合法性」という制約があります。「明確性」は、一般の人にもどんな事業を営むの理解できることが必要です。「営利性」は、利益を上げることが目的でない場合は事業目的にはできません。「合法性」は、違法な内容の事業目的にはできません。
許認可を取得するには、目的欄に当該事業目的が含まれている必要がありますので、許認可を取得予定の場合には、あらかじめ、事業目的を目的欄に入れておく必要があります。
※目的欄の項目の変更登記の場合には、その登記申請の際には、登録免許税が30,000円かかります。
会社設立の本店所在地のルール
定款上の本店所在地の記載の方法には、下記の2つの方法があります。
- 独立の最小行政区画までの記載にとどめておく方法(埼玉県〇〇市)
- 具体的な番地まで記載する方法
一般的なのは1による記載方法になります。将来、本店移転をすることがある場合などは、1の記載方法によれば、同じ市区町村内の本店移転の場合は、定款変更をする必要がありません。
会社設立の登記申請書にも「本店」の所在場所を記載しますが、その所在場所は、番地まで正確に記載する必要があります。ただし、ビル名(建物名)と部屋番号については、記載してもしなくてもよいとされています。
会社設立に際して出資される財産の価額またはその最低額のルール
発起人や設立時募集株式の引受人等は現金又は現物出資(発起人のみ)により出資の履行をします。これらの出資された財産の総額から会社の資本金を決めます。
会社設立の場合に、設立時に出資される財産の額については、必ずしも確定した額でなくてもよく、「その最低額」を決定すればよいことになっています。
定款作成後、定款に記載した「発起人の出資額」のうちの一部分のみしか出資の履行ができないような場合にも設立ができるように認められた措置です。ただし、設立登記申請時には「資本金の額」を確定する必要があります。
「資本金の額」については、「発起人全員の同意」にて定める必要があり、設立登記申請に際しては「資本金決定書」を作成する必要があります。「定款」に資本金の額についての記載ある場合には、「資本金決定書」の作成は不要となります。
出資された財産の総額から設立費用等を控除した額のうち、2分の1までは資本金としないことができます。この資本金としない額のことを払込剰余金といいます。払込剰余金は資本準備金として計上することになります。
会社設立の発行可能株式総数
発行可能株式総数とは、会社設立時に実際に発行する株式数と異なる、将来に向かって、定款を変更することなく、取締役会決議などで発行が可能な株式数の総数のことです。
公開会社の場合、発行可能株式総数の4分の1以上が発行済になっている必要がありますが、非公開会社(株式譲渡制限会社)の場合、そのような制限はありません。
定款の相対的記載事項
相対的記載事項とは、その事項について定款に定めておかないとその効力が否定されてしまうものをいいます。
相対的記載事項には、以下のものがあります。
- 現物出資
- 財産引受
- 発起人の報酬
- 設立費用
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主総会の招集通知を出す期間の短縮
- 役員の任期の伸長
- 株券発行の定め
現物出資、財産引受、発起人の報酬、設立費用を定める場合には、裁判所の選任した「検査役」の調査を受けなければなりません。
資本金と法人県民税・法人市町村民税の均等割り、消費税の免税期間
資本金1千万円以上の場合と、資本金1千万円未満の場合だと、法人県民税、法人市町村民税の均等割りが異なります。
埼玉県の場合、法人県民税の均等割りは、資本金1千万円以上1億円以下の場合は5万円、資本金1千万円未満の場合は2万円になります。法人市町村民税は、資本金1千万円以上1億円以下の場合、市町村内の従業員数が50人を超える場合は15万円、50人以下の場合は13万円、資本金1千万円未満の場合、市町村内の従業員数が50人を超える場合は12万円、50人以下の場合は5万円になります。
また、資本金が1千万円未満の場合、消費税の免税期間2年間を利用できます。
会社設立関連情報
会社設立のご相談時にご準備していただきたい書類等
以下の書類などがありますと、ご相談がスムーズです。
- 会社実印(代表者印)
- 発起人全員と代表取締役の運転免許証コピー等本人確認書類
- 資本金の振込を受ける発起人代表者の銀行口座通帳コピー
- 発起人全員の実印と印鑑証明書
- 代表取締役の個人実印と印鑑証明書(取締役会を設置する場合)
- 取締役全員の個人実印と印鑑証明書(取締役会を設置しない場合)
- 監査役の運転免許証コピー(表・裏)